福岡県が独自開発 ラーメン専用小麦の使用店急増 「ラー麦」全国区へ
2013.1.28 02:06
http://sankei.jp.msn.com/region/news/130128/fkk13012802060001-n1.htm
■コシの強さと風味 特長
福岡県が独自開発したラーメン専用小麦「ラー麦」を使用するラーメン店が続々と増えている。発売時の10店から、わずか3年間で100店舗と10倍に達した。グルテンと呼ばれるタンパク質を多く含み、麺にするとコシが強く、「カタ」「ヤワ」など硬さの注文に幅広く対応できる。県内農家での限定生産のため供給量アップなど課題もあるが、ラーメンどころ・福岡を支える陰の主役として期待が高まっている。(大森貴弘)
◆リピーター多数
全国に40店を展開するラーメンチェーンの一蘭(福岡市)は平成22年9月から、太宰府店(福岡県太宰府市)でラー麦を使用。ポスターで客にPRしている。
「柔らかくゆでても、コシがありおいしかった」「何店か食べ比べたが、ここの麺が一番おいしかった」。アンケートの評価は上々。太宰府天満宮が近く県外客も多い店だが、「ラー麦ラーメン」を求めて、1~2割がリピーターになっているという。
ラー麦は外国産小麦に比べて仕入れ価格が1割高いが、一蘭は「ラー麦」の味を全国発信しようと、東京都内の店舗での使用を検討している。同社の広報担当、大金倫子さんは「博多ラーメンはすでに全国ブランドですが、ラー麦という新たな価値が加われば、もっと人気がでると考えています」と話す。
◆グルテン増量
豚骨ベースのスープ、細麺で知られる福岡のラーメンだが、麺の小麦は大半が外国産だ。
福岡県は小麦の地産地消を進めようと、県農業総合試験場で4年をかけてラーメン専用小麦の開発に成功し、農林水産省に新品種として登録。県民から愛称を募集して21年9月、「ラー麦」の名前で発売した。
コシの強さに繋がるグルテンの含有量は、通常の小麦で10%程度だが、ラー麦は12~13%に向上している。小麦の弱点の雨を避けるため、梅雨前に収穫できる栽培上のメリットもある。
ラー麦の普及を担当する県水田振興課の中馬俊介係長は「風味やコシなど“博多ラーメン”に最も適した麦です」と胸を張る。
◆口コミで拡大
ラー麦が登場した当初、県内ラーメン店の反応は悪かった。供給量の少なさに加え、低い知名度と細麺への加工の難しさから、使用する店は4社10店舗に過ぎなかった。
ところが、口コミで「ラー麦ラーメンはうまい」と人気が広がるつれ、取り扱う店舗が急増し、24年末には21社約100店舗になった。この勢いに福岡県は「将来は、県内2500店のラーメン店の半数で、ラー麦ラーメンを提供するようになってほしい」(水田農業振興課)と期待する。
「ラー麦ラーメン」の普及により、ラー麦を福岡を代表する全国区の食材にしようと、作付面積も現在の900ヘクタールから、5年後の平成30年に3千~4千ヘクタールにする計画を立てる。
ラー麦を開発した県農業総合試験場食品流通部の古庄雅彦部長(55)は「苦労して作ったラー麦利用が増えているのは、子供の成長を見ているようだ。栽培に手間がかかり、加工しにくいなど課題もあるので、試験場でさらに改良に取り組みたい」と話した。